大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和61年(行ツ)151号

上告人

社会福祉法人東京光の家

右代表者理事

田中亮治

右訴訟代理人弁護士

高橋秀忠

被上告人

東京都地方労働委員会

右代表者会長

古山宏

右指定代理人

佐藤宏

谷原隆之

右参加人

東京光の家職員労働組合

右代表者執行委員長

原田恵理子

右当事者間の東京高等裁判所昭和六一年(行コ)第一七号不当労働行為救済命令取消請求事件について、同裁判所が昭和六一年六月一八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高橋秀忠の上告理由について

原審が適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件救済命令に違法はないとした原審の判断は、正当として是認することができ、また、右判断は所論引用の判例に違反するものではない。原判決に所論の違法はなく、右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、ひっきょう、独自の見解に立ち若しくは原審の認定しない事実に基づいて原判決を論難するか、又は原判決を正解しないでその不当をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島昭 裁判官 香川保一 裁判官 林藤之輔)

上告代理人高橋秀忠の上告理由

第一 上告理由第一点

原審判決は、不当労働行為の救済申立における立証ならびに救済手続参与に関する労組法第五条第一項の規定について、独断的な恣意的な解釈を踏まえて行なった判決であって、法令違反の判決である。

一 労組法第二条と第五条第二項とは、統一的に理解すべき不当労働行為審査手続参与のための必要要件である。労組法第五条第二項第二号の「主たる事務所の所在地」という規約要件をもって不当労働行為救済手続のための便宜上の要求であると解する原審判決は、恣意的解釈による法令違反の判決である。

1 労組法第五条第一項は「労働組合は労働委員会に証拠を提出して、第二条及び第五条第二項の規定に適合することを立証しなければ、この法律に規定する手続に参与する資格を有せず、且つ、この法律に規定する救済を与えられない」と明定している。したがって、労働組合から申立を受けた労働委員会は、申立案件が不当労働行為であるかどうかの審査手続に先立って、申立人組合が法の保護を受けうる労働組合であるかどうかを審査(資格審査)すべきである。これは、労働組合法ならびに労働委員会規則における労働委員会に対する公法的要請である。その立法趣旨は、最高裁判例(昭和三二・一二・二四・最高裁第三小法廷・日本通運事件判決・最高裁民事判例集一一巻二三三六頁)によれば、「労働組合法第五条の立法趣旨は、労働委員会をして同法第二条および第五条第二項の要件を欠く組合の救済申立を拒否せしめることにより、間接に、組合が右各法条の要件を具備するよう促進することにあるものと解すべきである」というのである。

2 しかるに、原審判決は、団体交渉の相手方たる上告人の所有地地番および電話番号を自らの住所および電話番号として盗用するが故に不当労働行為の救済申立における法定適格要件について適法に立証しえない筈の参加人組合の申立適格につき、被上告人が、法ならびに規則の定めによって不当労働行為審査に先行してなされなければならない申立人組合の資格審査を、懈怠したことについて、「資格要件のなかには、それを欠くことによって実体的にも不当労働行為の成立が否定されるものもあるが、不当労働行為の成否自体には関係がなく、不当労働行為救済手続を円滑にすすめるために便宜上要求されているにすぎないものもある」として、労組法第五条第二項二号の「主たる事務所の所在地」という規約要件をもって、法の要求する適格要件ではないかのように、恣意的に解釈するのである。統一的に理解せられるべき労組法第二条と第五条第二項とについての独断的・恣意的解釈に基づく法令違反の判決である。

二 不当労働行為救済申立事件における申立人組合の組合資格の先行審査は、労組法第二条および第五条第二項の要件の具備を立証し得ない申立人組合の救済申立は、これを拒否すべき労働委員会の国家への公義務の履行として、労組法ならびに労働委員会規則の要請するところである。前掲最高裁判例によれば、「この義務は労働委員会が、組合が第二条および第五条第二項の要件を具備するように促進するという国家目的に協力することを要請されているという意味において、直接、国家に対して負う責務にほかならず」とする国家への公義務である。しかして適格組合であることが、不当労働行為審査手続開始の要件であることについては、労組法第五条第一項の文理上明らかであり、まさにこの資格審査制度は、適法組合の育成と濫訴の弊を防止するための法の要請である。それ故に、申立人組合の資格審査という審査手続開始の要件を、不当労働行為救済のための要件に擦り替えて、恣意的な措置において不適格組合を庇護する原審判決は法令違反の判決である。

1 資格審査の先行審査に関しては、被上告人は、被上告人自身が発行する「労働委員会の手引」において、「次の場合には、労働組合法できめられた要件を備えた適法の労働組合であるかどうか、労働委員会で審査することになっています。この資格審査は、そのつどあらためて行なうことになっています」として、「労働組合が不当労働行為救済を申立てる場合」をあげて手引きをしているのである。しかしながら、現実はその公義務を履践しないのである。まさに、羊頭狗肉の典型的行政委員会というほかはない。

2 この被上告人行政命令を庇護するのに、原審判決は「同法五条一項の文言は、文理上は資格審査の決定を時間的に不当労働行為の審査手続に先行すべきことを定めているものと解釈することも、そうでないと解釈することも可能であって、文理のみからはいずれとも決し難い」などという曖昧な理解において、不当労働行為審査手続開始の必要法定要件たる規約要件を不当労働行為の成否の要件に擦り替えて、「主たる事務所の所在地」に関する不法行為は不当労働行為の成否には何のかかわりもないものとして、独断的に措置したのである。法令の恣意的解釈として違法の判決であり、最高裁判例を無視する信義則違反の判決である。

三 資格審査におけるいわゆる併行審査主義の採用・履践を容認する原審判決は、労働委員会に課せられた実質的資格審査先行の国家への公義務違反を容認する判決であって、昭和三二・一二・二四・最高裁第三小法廷・日本通運事件判決における最高裁判例にも背反する判決である。

1 資格審査先行主義は、不当労働行為審査手続における立法精神であって、労働委員会の公義務履行への強行法的要請である。しかるに原審判決は、被上告人が“併行審査主義”という本末転倒の論理の実定法的背理において、“実務上の取扱い”の名を利用し、自由裁量権の限界を越えた手続をもって、被上告人が救済命令を発した同年同月同日に決定した申立人組合の資格決定を認め、上告人の主張をしりぞけたのである。

2 しかも原審判決は、他人の所有地地番および電話番号を盗用し、公然と住所詐称を続ける参加人組合の申立適格には重大な疑義があるので、法ならびに規則に定められているとおりに先ず参加人組合の申立適格につき資格の確定をと、上告人が被上告人に対し昭和五八年九月から翌五九年二月に至るまで、口頭にて四回、書面にて八回にもわたって、真剣に要請を繰り返したのであったが、被上告人がこの要請を全く相手にせず、最高裁判例をも無視して、資格審査先行主義によるべきである法の精神を軽視し公義務の不履行を敢えてなした参加人組合救済の命令を庇護したのである。しかも、上告人の切なる要請をも相手とせず、準備書面の提出をも阻止し、いわば形だけの一回の口頭弁論だけをもって、判決手続を強行したのである。

3 このようにして、原審判決は、資格審査におけるいわゆる併行審査主義の採用・履践を容認し、労働委員会に課せられた実質的資格審査先行の国家への公義務違反を容認するのであるが、先に述べた数々の恣意的解釈による法令違反の判決であり、昭和三二年一二月二四日・最高裁第三小法廷・日本通運事件判決における最高裁判例にも背反する判決であると思料するのである。

第二 上告理由第二点

戸籍・本籍の制度と住所・主たる事務所の所在地の制度との混淆において、他人の所有地地番の盗用をもって適法であると解する原審判決は、法令違反の判決であることはもとよりのことであり、実定法秩序としての私有財産制度を否定する憲法違反の判決である。

一 本件参加人組合には組合事務所としてのそれ相応の物的設備の影も形もないのに、上告人の所有地地番を盗用し「主たる事務所の所在地」として指定することによって、その観念的場所が「生活の本拠・活動の拠点」となると解する原審判決は、戸籍・本籍に関して、行政区画が公法的機能を果たす観念的場所であるということと、「主たる事務所の所在地」が「生活の本拠・活動の拠点」たる実体的場所として、行政区画が私法的機能を営む場所であるということとを混淆する思考であって、住所・主たる事務所の所在地制度に関する法令の解釈を誤ったか、ないしは制度の趣旨を歪曲する違法の判決である。

1 現行住所制度における住所・主たる事務所の所在地は、実定法上、個人については「各人ノ生活ノ本拠ヲ以テ其住所トス」(民法二一条)といい、法人については「法人ノ住所ハ其主タル事務所ノ所在地ニ在ルモノトス」(民法五〇条)、営利法人たる会社については「会社ノ住所ハ其本店ノ所在地ニ在ルモノトス」(商法五四条二項)とされ、社会生活の実態を顕現する場所たる“日本人としての生活の拠点、活動の基地であること”を明らかにする“実体的場所”である。これは、日本人たることを明らかにし、家族関係・親族関係を明確にする戸籍制度における本籍の所在地、すなわち行政区画の公法的機能において、届出によって特定される“観念的場所”とは全く異質のものである。

かつては本籍と住所とが同一であるべき法制度であった。その後、自然人は動的存在なるが故に本籍と住所が分離することになった。戸籍制度としての本籍は観念的場所で足りるが、しかし法律関係の根源的要素の一である住所は、実体的場所であることを要請されるのである。住所は単なる公法関係にとどまらず、私法関係における公示の役割を果し、取引の安全を保護しているのである。即ち住所地に対し意思表示を通知しても、それが不到達の場合、最終的には公示送達をもってその通知の効力が維持されているのである。住所はその本人のためのみならず、その本人と法律関係にあるものすべてに対するためのものでもあるのである。すべての法律関係において住所の記載が要求されているのはこのためである。住所は、これを観念的なもので足りるとする考え方には賛意を表しがたい。民法第二二条には住所の知れざる場合に於いては居所をもって住所と看做す旨規定されているが、これは住所概念を棄てたものではなく、居所をもって住所と看做したにすぎない。住所が全く観念的なものでよいとするものではない。このことは法人(法人格なき社団も含める。以下法人という。)においては、自然人より強く要請されているのである。

従って、労働組合を含めて、法人設立登記の必要記載事項たる法人の住所(民法四六条、商法五七条)、労働組合を含む権利能力なき社団(非法人ともいう)の訴訟(民訴法四六条)における“実体的場所”が住所なのである。労働組合の不当労働行為申立における形式的必要要件たる労働組合の「主たる事務所の所在地」はそれ相応の物的設備の所在地を意味することは、法的生活における常識である。盗用によって、労働組合の「主たる事務所の所在地」だと勝手気ままに指定することによって特定するという観念的場所ではない。

本件における参加人組合は住所という実体的住所がないにも拘わらず、単なるいやがらせないしは上告人に対する挑発の意図をもって住所の存在を詐称し、また被上告人も、事務局職員の調査によって実体的場所としての住所ではないことを知っていたにも拘わらず、住所制度を無視して資格審査上虚偽のものを審査したのである。このことは労組法のみならず、あらゆる法人に要求されている住所要件を無にするに等しいものである。

2 しかるに、原審判決は、組合活動の場としての上告人施設地を参加人組合の組合事務所の所在地であると誤認して、本件参加人組合には組合事務所としてのそれ相応の物的設備の影も形もないのに、上告人の所有地地番を盗用し、「主たる事務所の所在地」として指定することによって、その観念的場所が「生活の本拠・活動の拠点」という“実体的場所”になると解釈するのであるが、そのような解釈は、戸籍・本籍に関して、行政区画が公法的機能を果たす観念的場所であるということと、「主たる事務所の所在地」が「生活の本拠・活動の拠点」たる実体的場所として行政区画の私法的機能を営む場所であることとを混淆する思考であって、住所・主たる事務所の所在地制度に関する法令の解釈を誤ったか、ないしは制度の趣旨を歪曲する違法の判決である。

二 原審判決は、労働組合の名において存在する上告人法人の従業員中の極少数者集団(従業員九〇名中三名)たる参加人組合が、その正体において確信犯的泥棒組合であることが明白であっても、すなわち労働組合の名がつけば、使用者の許可なく使用者の住所、電話番号を組合の事務所の住所、電話番号として当然に使用することができると公言し、かつ、現実に強引にこれを盗用し、不法行為を続ける組合であっても、その団体交渉の申入れは適法であるというのである。そして原審判決は、使用者たる上告人がその泥棒性の払拭を説得するのを泥棒組合において聞き入れないために、団体交渉が軌道に乗るのが遅延した事態をもって、使用者たる上告人が団体交渉を「正当な理由なく拒むこと」だと判断し、“団体交渉に応じよ”と命令するのに、泥棒組合への団交拒否の「謝罪掲示」までをも命令した被上告人労働委員会命令を庇護するのに、上告人の口頭弁論開廷の要請(別添書面参照)を拒否して敢行した判決であって、信義則違反の不当違法な判決である。

三 他人の所有地地番の盗用を容認する原審判決は、国家行為としての行政区画の設定における二重機能を理解せず、その私法的機能の制度的顕現としての不動産登記制度を媒介とする、私有財産権の憲法上の保障を否定する憲法違反の判決であり、私有財産権の客体となる他人の所有地の地番の盗用は、財産権不可侵の憲法上の保障に背反するものであって、民法上、不法行為としての所有権侵害であるから、泥棒組合の労働組合的実体に藉口して、その侵害行為をもって適法行為であるとして容認するのは、憲法違反の判決である。

1 国家国民生活に不可欠な行政区画は、公法的性格と私法的性格の二重性をもっており、公法的性格における行政区画としての地番は、制度としての戸籍・本籍を支える地番であり、「本籍」の住所地は届出によって“日本人であること”を定かにする市町村(区)の区域内に所在する特定の“観念的場所”であって、社会生活の実体を伴う場所たることを要しない。

これに対し、国家行為として定まる行政区画の私法的性格における地番は、日本国憲法体制としての私有財産制度のもとにおける財産権として保障される地番であり、これは不動産登記法において法律的に顕現しているものであって、この財産権の侵害は除去されねばならないものである。しかし、わが国の実定法としての住所制度における住所・主たる事務所の所在地という場所、すなわち“生活の本拠”“活動の拠点”としての“実体的場所”は、国民相互の権利関係に直接的に関係を持つ地番としての私法的性格における行政区画である。

2 したがって、他人の所有地地番を無断でこれを自己の住所として表示する行為を容認する原審判決は、国家行為としての行政区画の設定における二重機能を理解せず、その私法的機能の制度的顕現としての不動産登記制度を媒介とする私有財産権の憲法上の保障を否定する憲法違反の判決であり、私有財産権の客体となる所有地地番の盗用は、財産権不可侵の憲法上の保障に背反するものであって、民法上、不法行為としての所有権侵害であるから、泥棒組合の労働組合的実体に藉口して、その侵害行為をもって適法行為であるとして容認するのは、憲法違反の判決である。

第三 上告理由第三点

口頭弁論の手抜き判決たる原審判決が、口頭弁論廷において明らかにすべきであった、本件事実関係における、参加人組合の不法集団性の実態と原審判決の違法性

1 上告人法人は、大正八年の創立以来一貫して視覚障害者のうち更に重度者を対象として、その福祉のために献身してきたのである。ところが、昭和五四年九月、極く少数からなる参加人組合がその前身たる総評全国一般三多摩統一労働組合の分会を結成したのであったが、同五七年四月、本部との路線の不一致によって解散、追放され、同五月に現在の三名からなる組合が結成されたのである。その間、昭和五五年五月に、上告人は参加人組合によって不当労働行為の事実ありとして被上告人労働委員会に申立てられ、足かけ三年にわたる時間と精力と費用とを不毛の問題のために浪費させられたのであったが、命令が出される直前に申立人(現参加人組合と同じメンバー)によって、申立てが取り下げられたのであった。これは、まさに濫訴の典型であり、その濫訴によって福祉業務が計り知れなく妨害され、傷つけられたのである。

その後、参加人組合は、そのあまりの過激性と特異な思想による施設解放運動と称する活動の故に、上告人施設に入所する一九〇名の盲目の入所者自治会とその保護者会にも抗議されているだけでなく、上告人施設に働く一般職員集団からも完全に信頼を失ってしまったのである。

しかし、参加人組合は、本件第一審判決以来ますますその過激性と破壊性とをあらわにし、無責任な外部活動者を動員しては施設玄関前に乱入し、大声をもって騒ぎ、盲目の入所者に恐怖感を与えて、その平和な生活を混乱させているのである。

2 更に、施設入所者を解放するとうそぶき、入所者を自分たちの運動に巻き込み、施設に無断で、しかも施設側の心配をよそに、五日間も施設入所者であって情緒障害を持つ某入所者を自分たちの自宅にかくまったりし、福祉施設業務に重大な妨害を加えた。そのためその入所者は、極度の不安定状態におちいり、それがもとで五〇日間も精神病院に入院を余儀なくされるという、暴挙までおかしたのである。

また原審判決後、すでに数回おこなわれている団体交渉には、過激な組合運動で知られている近隣企業の労働組合員、とりわけ、そのあまりの激しい組合活動の故に刑事問題までに発展し、一年以上の求刑さえされたと新聞報道までされている者をも、委任したと称して団体交渉に出席させている状況である。

3 原審判決は、このような特異な思想をもって福祉施設を否定し、労働組合至上主義をもって職場秩序を混乱させ、それがために施設全体からひんしゅくを買っている参加人組合宛に、団交拒否の謝罪文を書いて玄関前に十日間も掲示せよという被上告人労委命令を、形だけの一回の口頭弁論だけで実質的口頭弁論手抜きの判決において、これを容認したのである。交渉相手の所有地地番を盗用しているだけでなく、労働組合という名を利用し、外部の者をも引き連れて非協力の限りをつくし、福祉施設の健全な運営を妨げている参加人組合に対し謝罪せよ、との被上告人命令を庇護した原審判決は、信義則違反の判決であり、公序良俗に反する違法判決である。若しも、このような判決が容認されるならば、上告人法人は、どのようにして平和で健全なる福祉施設運営をすべきか全くその方途を失い、ひいてはかかる過激集団の暴力行為によって危局に当面せしめられる福祉施設の激増を危惧し、その荒廃を憂慮するのである。

第四 上告理由第四点

原審判決は、労使対等の関係かつ労使対立の関係にある当事者双方における信義則ないしクリーンハンドの原則を無視する判決であって、破棄されるべき違法の判決である。

1 上告人は参加人組合に対し、本件団体交渉要求の当初から参加人組合の詐称する組合事務所の所在地を本来の組合事務所の所在地に変更しさえすれば、直ちに団体交渉に応ずる旨明言していたのである。本件参加人組合との紛争の原因はこの点にあったのである。

2 上告人としては、住所、従って組合事務所の所在地が生活の本拠ないしは活動の拠点であり、その実体の伴わない場所は組合事務所の所在地とは考えられないと確信し、参加人組合に対し、参加人組合の本来的な事務所の所在地への変更を要求し、かつ、その変更に応じない場合は団体交渉を拒否すると、主張したにすぎない。本件労使関係の混乱の原因は、参加人組合による虚偽の組合事務所の所在地の設定にあったのである。上告人は、いたずらに労使関係を混乱に陥れた参加人組合には、信義則の観点から法的保護がなされるべきでないと確信するのである。原審判決は、信義則違反として破棄されるべきものと思料する次第である。

以上の四点の上告理由について、御庁の厳正なるご判断を懇請する次第である。

以上

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